2003.10.13, 12.20更新
無料講演会
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特別企画:京都健康フォーラム | ||
「いたみフォーラムー慢性痛を語ろう」開催によせて 健康フォーラム2003代表世話人 慢性疾患・リハビリテイション研究振興財団と財団法人体質研究会の主催で、「いたみフォーラムー慢性痛を語ろう」を別紙のポスターのように2004年1月31日に京都で開催することになりました。痛みを専門にされている基礎医学者と臨床医が一同に会し、市民の方にも分かりやすい内容で痛みの最新のメカニズムや治療について講演と議論をしていただきます。もちろん会場の参加者にも議論に加わっていただきたいと思います。 30年ほど前までは、「慢性痛」という考え方さえなかったといわれています。当時は、急性の痛みに対する鎮痛薬や神経ブロックによる治療が、慢性的な痛みの治療に用いられてきました。やがて、痛みが慢性化しますと、急性の痛みに対する治療法では痛みのコントロ−ルが困難なことが明らかになりました。癌性の痛みを含めた慢性痛をいかに治療するかは、世界的に重要な問題なのです。 米国では、すでに慢性痛に対して、集学的治療(Multidisciplinary approach)が行われ、ペインセンタ−を含めたこのような施設が1980年代で1000カ所になります(日本ではまだありません)。わが国においても、麻酔科医、脳外科医、整形外科医、心療内科医、精神科医、歯科医、臨床心理士、理学療法士、看護師などの会員により構成される日本慢性疼痛学会が1982年に発足して(当初は研究会)21年になります。また、基礎医学者と臨床医で構成される日本疼痛学会もあり、慢性痛が各科、各領域に及ぶ症状ないし症候群であり、その研究や治療が、いかに学際的かつボ−ダレスでなければならないかおわかりいただけると思います。 痛みとくに慢性痛は最も苦痛な症状です。頭痛、腰痛、胸痛、腹痛、上肢痛、下肢痛、顔面痛、口腔内の痛みなど痛む場所は多彩です。しかも痛みの機序は基礎医学的にもまだまだ不明な点が多いのです。慢性痛になりますと、単に生理学的な痛みだけでなく心理的、社会的、行動的要因が加わります。癌などの痛みになりますとspiritual pain(霊的痛み)がさらに加わり、total painになるわけです。痛み--=1つの生物学的原因といった線形のモデル(要素還元主義的モデル)では役立たないのです。 Fordyceらが主宰するWashinton大学のPain Management Centerでは、慢性痛患者さんを対象に、認知−行動療法に基づい慢性疼痛管理プログラムにより、集学的治療が行われています。慢性痛の治療は“cure”から“care”に治療の視座が移る時期に当たります。治療の要点は、痛み中心の生活や人生から、痛みがあるが、それにとらわれず、これまでよりも豊かな生活と人生が送れるといった、痛みに対する認知や態度の修正と変容にあるわけです。そのため、集学的治療は、はじめに述べたような痛みに関わる分野の医療の専門家が集まり、治療スタッフが、痛みを生体システムだけでなく生体をとりまく家族や職場といった大きなシステムの異常としてとらえねばならず、疼痛への処置(薬物、神経ブロック、レ−ザ−療法など)や患者の疼痛行動を、全体の治療の中でどのように位置づけし構造化していくかを検討できる「場」の存在が重要になるのです。 以上のような視点より、「慢性痛とはなにか」、「21世紀に慢性痛の治療はどうあるべきか」のテ−マについてベテランと若手の研究者・臨床家に集まっていただき、大いに語り合っていただきたいと考えております。きっと専門以外の方にも市民の方にも実りあるフォーラムになると思っています。
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