2000.01.11
健康指標プロジェクト
 

 健康指標アゴラ(ニュースと意見発表の広場)

ヒト遺伝子解読からシステム生物学への脱皮
山岸秀夫
(財)体質研究会 健康指標プロジェクト主査
 
 

 年末にシアトルのL.フッド博士より、数学者、機器工学者、医生物学者など数百人の研究者を抱える新しいシステム生物学の大研究所設立のニュースが入ってきた。2003年に解読の終了するヒトの全遺伝子情報をコンピューターに取り込んで、多くの遺伝子、タンパク質、細胞構成因子のネットワークから新しいシグナルをとりだし、癌、心臓病、自己免疫疾患などの前兆を見つけ予防する21世紀の医生物学を目指すとの事である。"環境と健康" 12巻の巻頭言 "21世紀を目指して新しいプロジェクトを−還元主義を超えて" で菅原先生が提示された構想とまさに規を一にするものである。L.フッド博士はシアトルのワシントン大学教授を辞して、この民間研究所の所長となり、ベンチャー企業8社から初年度5億円の出資を得て早速、新年1月からワシントン大学の構内で発足した。その理事会には先に京都賞先端科学技術部門で受賞した英国の分子生物学者S.ブレナー博士や細胞周期の研究で増井禎夫博士と共に米国医学会の1998年度ラスカー賞を受賞したフレッドハッチンソン癌研究所長のL.ハートウェル博士も加わっている。私どもの健康指標プロジェクトはまだどのようにして還元主義を超えて複雑系を解読するかを模索中であるが、日本でもそのシンクタンクの受け皿となる研究所の誕生に期待している。

(百万遍通信 No.65より)