2002.11.4
 

 平成14年健康指標プロジェクト講演会要旨

第35回(11月16日(土) 14:00〜17:00、京大会館)
ミトコンドリアを原因とする酸化ストレスと老化

石井 直明
(東海大学医学部分子生命科学系遺伝情報部門)
 

                   
 これまで老化は単に自然崩壊の過程であり、発生や分化のように遺伝子が関与しているとは考えられてこなかった。しかしこの10年ほどの間に、ヒトの遺伝性疾患であるウエルナー症候群のような早老症や、マウスやショウジョウバエ、線虫から分離された長寿や短命の突然変異体の分子遺伝学的研究から、老化に関連する遺伝子の存在が明らかになり、老化研究が急速に進展するようになった。

 これらの研究から(1)細胞には分裂回数に限界がある、(2)染色体の安定性が老化に関与する、(3)エネルギー代謝の過程で副産物として生じる活性酸素が老化を促進するなどが明らかにされ、環境と遺伝子の両者が老化に関与していることが明らかになってきた。この中でも活性酸素が老化の原因として最も注目されている。我々は15年前から分子遺伝学的な解析技術が確立している線虫に一種であるC.エレガンスを使い、酸化ストレスと老化の関係を調べてきた。その結果、主に細胞内小器官であるミトコンドリアから産生される活性酸素が細胞の構成物を攻撃することで、細胞の機能の低下させることを明らかにした。これらの細胞機能の低下が器官や臓器の機能を低下させたものが老化であると考えられる。活性酸素はこのような基本的な老化に関与するばかりでなく、加齢に伴って増加する癌や血管障害にも関与していると考えられている。この活性酸素を制御し、抗加齢を実現しようという試みもなされるようになってきた。

 この会では、老化研究の歴史を振り返りながら、老化遺伝子の発見、エネルギー代謝と、その過程でミトコンドリアから生じる活性酸素の老化への関わり、さらに抗老化に至る最新の老化研究の話題を提供したい。

 

 
 

 

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