2002.8.26
 

 平成14年健康指標プロジェクト講演会要旨

第33回(9月21日(土) 14:00〜17:00、京大会館)
代替医療の実践と問題点

今西 二郎
(京都府立医科大学微生物学教室)
 


1. 代替医療とは
 代替医療(alternative medicine)とは、一般に大学の医学部で教育されている主流の現代西洋医学以外の医学と定義されている。アメリカでは代替医療という言葉が、ヨーロッパでは補完(相補)医療(complementary medicine)という言葉が使われてきた。しかし、最近ではこの両者を合わせて補完(相補)・代替医療(complementary and alternative medicine; CAM)と呼ばれることが多くなってきている。
 代替医療は現代西洋医学に対してできた言葉である。現代西洋医学は分析的であり、病気を中心に考えるのが基本である。それに対して、代替医療は病気よりも病人に焦点を当て、全人的な診断・治療を行うのが特徴である。そして、ヒト自身に備わっている自然治癒力や自己回復力を目覚めさせ、精神と身体のバランスを整え、免疫力を強化することを目的としている。

2. 代替医療の種類
 このような代替医療の定義からして、さまざまな種類の治療法が含まれることになる。世界各地で行なわれている伝統医療、民族医療、民間療法をはじめとして、健康食品、食事療法などがある。さらに物理的な刺激や、運動を利用したものなどもある。さらに五感を応用したアロマセラピー、芸術療法、カラーセラピー、音楽療法などが含まれる。信仰療法やシャーマニズムといった宗教的なものまで代替医療の中に含まれる。これらをひとまとめにして代替医療というにはいろいろな問題があろう。また、これらの中には本格的な治療を目的としたものから、趣味的なものまでさまざまなものが含まれている。

3. 代替医療の現状
 代替医療の日本での医師による取り組み状況を調査してみた。その結果、73%の医師が代替医療の実践を行っている。そのほとんどが漢方であり、代替医療を行っている者の90%以上を占めている。鍼灸については約12%の医師が取り組んでいるに過ぎなかった。その他の代替医療の実践については、さらに少ないことがわかった。また、代替医療に関する知識に関しても、72%の医師は「漢方について知識はある」としているが、その他の代替医療についての知識を有しているものの割合はかなり低かった。また、代替医療の効果に対する信頼性については、漢方、鍼、灸について非常に高い評価を得ている。それに比べ、他の代替医療は信頼度は低い。
 ついで、一般市民の代替医療の取り組みについても調査してみた。その結果、約60%の市民が代替医療を実践していることがわかった。その中でも多いのは、漢方、あんま、マッサージであり、ついで健康食品や鍼、灸などがよく行われていることがわかった。また、一般市民の間でも医師と同様、漢方は比較的、効果に対する信頼度は高いが、健康食品は信頼度は低いという結果が得られた。

4. 代替医療における問題
 代替医療にはいくつかの問題点がある。一つは、代替医療の信頼性である。すなわち、EBMに則った手法で代替医療が評価されているかという問題である。
 2つ目は、代替医療に関する正確な情報が伝わっているかどうかという問題である。これについて結論をいえば、代替医療に関するデータベースは充実していず、正確な情報を得るための機会は少ない。
 3つ目は、代替医療の施行者についてである。医師や鍼灸師などの有資格者が行うことにはあまり深刻な問題はない。しかし、多くの代替医療が何の資格も持つこともなく施行されている現状は、きわめて危うい。早急に資格認定制度を確立していくべきであろう。
 4つ目は、代替医療の施療施設の問題である。非医療施設については、一定の基準を設けた上で、公的なものとして認定していかねばならない。
このように代替医療を実践していくにはさまざまな解決しなければならない多くの問題が残されている。

 

 
 

 

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