2002.4.1
 

 平成14年健康指標プロジェクト講演会要旨

第30回例会記念講演会
4月20日(土) 13:20〜17:20、京都パークホテル)
脳卒中治療の最前線

菊池 晴彦
(国立循環器病センター名誉総長
神戸市立中央市民病院院長)
 



 脳の血管異常に基づき発症する脳の突発性な疾患、脳卒中(脳梗塞、脳出血)に対しては代謝を妨げる非生理的な循環環境の改善、すなわち血管閉塞の改善や再出血の予防こそが急性期治療戦略のすべてであると考えられていた。動脈硬化を促進するといわれているリスクファクターの回避という予防的治療手段に勝る画期的な脳に対する新たな急性期治療法がなかったことがその背景にあった。しかしながら薬剤による脳血栓溶解療法の有効性が欧米にて示されて以来、これまでは困難と考えられてきた脳卒中急性期治療が変わろうとしている。現在では発症直後より、専門家による適切な診断と治療、すなわち、心臓におけるハートアタックへの対抗手段の如きに脳に於いてもブレインアタックに対する専門的な診断と治療が欠かせないという社会的な認識と体制の確立が求められている。ブレインアタックとは、脳卒中およびその原因であり、その対抗手段としては、予防、診断・治療と機能の再生・再建が大きな柱となる。近年の脳科学の目覚ましい発展により神経細胞に内在する生あるいは死への制御に関わる細胞内カスケードの実態が明らかとされつつある。また、脳虚血等の様々なストレスに対する脳の抵抗性の増強現象が明かされ、脳の生存能力を如何に高めるかという実験において、すでに脳梗塞に明らかな抵抗性を持つ実験動物を作る技術が生み出された。さらに中枢神経の再生と機能再建という新たに確立された科学領域では、これまで不可能と思われた神経回路網の再生あるいは、成熟神経細胞への分化可能な神経幹細胞応用へ向けた基礎的研究が始められている。こららは、今までに存在することのなかった全く新たな手法による新たな治療法開発への挑戦である。近年、脳動脈瘤治療あるいは、狭窄性血管病変に対し、臨床の場で積極的に用いられる様になってきた脳卒中予防技術の一つである血管内治療、従来の開頭術を用いずに血管内操作のみで、脳卒中の予防を達成する、あるいは急性期治療を行う最先端技術の現状報告とともに、ブレインアタックに対する基礎的研究によってもたらされた成果の一部を紹介する。
 

 

 
 

 

平成14年健康指標プロジェクト講演会開催計画に戻る
健康指標プロジェクトINDEXに戻る
トップページへ