2002.1.31
 

 平成14年健康指標プロジェクト講演会要旨

第29回(2月16日(土) 14:00〜17:00、京大会館)
細胞生物学からみた神経ネットワーク

竹市 雅俊
(京都大学大学院生命科学研究科
理研発生・再生科学総合研究センター)
 
 神経ネットワークは、個々の神経細胞が順につながることによって形成され、その結果として、高度な神経機能が生じる。神経細胞間の接点がシナプスである。私達は、細胞接着のしくみを研究してきたが、シナプスも特殊化した細胞間接着装置と考え、その形成機構を研究している。一般の細胞間接着にはカドヘリン分子群が重要な役割を果たしているが、シナプスにもカドヘリンが局在し、その形成と維持に関わることが明らかになってきた。ショウジョウバエのあるカドヘリン変異体では、軸索と標的ニューロンとの会合パターンが著しく乱れ、同時に、形成されるシナプスの構造が異常である。また、ラット海馬由来の培養神経細胞を用いてカドヘリンを阻害すると、スパインの形態に明確な異常が生じる。さらに、脳で発現されるあるカドヘリンのノックアウトマウスでは、シナプスの電気生理学的性質(長期増強)、情動行動(不安・恐怖)に関する異常が観察される。カドヘリンはシナプスの形成制御を介して、脳の高次機能の発現にも影響を与えているらしい。

 

 
 

 

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