2002.1.8
 

 平成14年健康指標プロジェクト講演会要旨

第28回(1月19日(土) 14:00〜17:00、京大会館)
食による糖尿病合併症の予防―糖尿病予防とフードファクターー
臨床医学の立場から

吉川 敏一
(京都府立医科大学 第1内科)
 


 糖尿病を含む生活習慣病の発症の3大要因は、SNPsを含めた遺伝的素因、ライフスタイル、食生活などの生活習慣要因、さらに環境要因である.酸化ストレスに関与する多くの遺伝子が同定され疾患候補遺伝子と考えられているが、多くの生活習慣病が多因子遺伝であり、その解析は難しい.生活習慣のなかには酸化ストレスと密接な関連にあるものが多く、喫煙、飲酒、不適切な食事などにより容易に酸化ストレスは増大する.環境因子のなかにも、活性酸素を発生するものがあり多数あり、特に活性酸素によるDNA傷害は発癌との関連で極めて重要である.

 糖尿病患者が酸化ストレスの状態にあることは多くの報告より明らかであるが、そ の酸化ストレス度を評価する臨床指標には議論のあるところである.また、生体内の 抗酸化物質は他の抗酸化物質と連携して効果を発揮しており、単独ではなく総合的に 抗酸化物質、酸化ストレス度を評価する必要がある.我々は、生体における酸化スト レス状態を評価するために、酸化/還元に関与するバイオマーカーを組み合わせて測 定し総合的に評価する試みを行っている(酸化ストレスプロファイル).早朝空腹時 に採血・採尿し以下の項目を測定した.酸化マーカー:尿中8-OHdG、血清過酸化脂質、抗酸化ビタミン:ビタミンC、A、α-、δ-、γ-トコフェロール、カロテノイド: ルテイン、ゼアキサンチン、βクリプトキサンチン、リコピン、αカロテン、βカロ テン、その他のバイオマーカー:Serum Total Antioxidant Status (STAS)、尿酸、 アルブミン、ビリルビン、ビタミンB12、葉酸、鉄、銅、T-Chol、TG、アポA1、アポB.糖尿病患者では健常者に比較して尿中8-OHdG/Cr、血清過酸化脂質が有意に高値であった.また、糖尿病患者ではSTAS、ビタミンC、ビタミンA/T-Chol、α-トコフェロール/T-Chol、ルテイン、ゼアキサンチン、リコピン、αカロテンが有意に低値であった.糖尿病患者において各マーカーと血糖・HbA1cに相関はなかった.尿中8-OHdG/Crと各マーカーとの相関関係についても検討したが、血清過酸化脂質、α-トコフェロールとの相関関係はなく、ビタミンAとの間に負の相関関係が得られた.

 糖尿病患者では抗酸化ビタミン、カロテノイドが低下しており酸化ストレス状態に あると考えられた.8-OHdG(8-OHdG/Cr、8-OHdG mg/h/kg)は尿中に増加しており、糖尿病患者では酸化的DNA損傷が亢進していることが判明した.また、その要因としてビタミンAの低下との相関が観察され、現在の糖尿病食に加えて、抗酸化の面からの食事療法、生活習慣の積極的な指導が必要であると考えられた.

 

 
 

 

平成14年健康指標プロジェクト講演会開催計画に戻る
健康指標プロジェクトINDEXに戻る
トップページへ