2000.12.5
 

 平成12年健康指標プロジェクト講演会要旨

第18回 (12月16日、14時〜17時、京大会館102)
健康な加齢のための社会医学間
辻一郎
(東北大学大学院医学研究科 公衆衛生)
 

   
  戦前(1935-36年当時)の日本人の平均寿命は、男性46.9年、女性49.6年と、先進国の中で最も短命であった。戦後、日本人の平均寿命は急伸長を遂げ、現在(1998年)では男性77.2年、女性84.0年と、世界で最も長くなった。その一方、痴呆・要介護高齢者の急増、老人の孤独、社会保障負担の増大など、「長寿の代償」とも言うべき事態が進行している。  

 平均寿命は、生存時間を測る指標に過ぎない。つまり、健康か病気か、痴呆か寝たきりかに関係なく、「あと何年生きられるか?」という生存の量 を測る指標である。いま、生存の質が問い直されている。残された寿命のうち、あと何年、健康で自立して暮らせるのか? それを測るのが健康寿命である。

 仙台市で行われた調査によると、65歳の男性では、平均余命16.1年のうち日常生活動作に自立して暮らせる期間(健康余命)は14.7年であった。同年齢の女性では20.4年の平均余命のうち17.7年が健康余命であった。平均余命と健康余命の差、すなわち要介護期間は男性1.4年に対して女性2.7年と、大きな差があった。健康寿命をめぐる男女差と地域差について論じる。

 アメリカのKahnとRoweは、サクセスフル・エイジングという概念を提唱している。これは年を取っても心身機能を保持できている状態と定義される。具体的には、病気や障害の原因となる危険因子が少ない状態、認知面 と身体運動面の機能を良好に保持している状態、人生に対する積極的な関与という3つの要素よりなる。健康寿命を延長し、サクセスフル・エイジングを達成することこそ現代人の最大の願いと言っても過言ではない。サクセスフル・エイジングを促進(阻害)する因子として、何が分かっていて何がまだ分かっていないのか、考察を加えたい。

 

 
 

 

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