2000.9.25
 

 平成12年健康指標プロジェクト講演会要旨

第16回 (10月21日、14時〜17時、京大会館102)
Eker (Tsc2 gene mutant)ラットを用いた腎癌発症の初期過程の解析
ー遺伝子型 (genotype)、表現型 (phenotype)、演出型 (dramatype)ー
樋野 興夫
(癌研、実験病理部、部長)
 

 

「歴史(時代認識)と方向性(リーダーシップ)」

(1)曲がり角を迎えている「発がん」研究の現状
  発がん」研究者のアイデンテイテイが「世界中を揺るがせる」存在とはみなされて いない。「発がん」研究者には、現代を「説得し」、「論破し」、「克服する」、「 器量と度量」が不可欠。「発がん病理」が衰微すれば「日本の癌研究」の繁栄も失わ れるという気迫、気概が必要である。

(2)時代の証人として「発がん病理」の現代の使命
  (a) 過渡期の指導原理
  (b) 新時代の形成力

「発がん病理」研究の重要性と「社会貢献」

 「発がん」は癌に関しての学問で「形態」、「起源」、「進展」などを追求する学問 分野である。癌研究者だけのものではなく、一般の人々のための学問でもある。我々 が、「発がん」をどのように考えるかはとても大切なことである。なぜなら、「発が ん」に対する概念が世界観、人生観、日常の決断や行動をも時には決定するからであ る。ある意味では癌の「起源」と「進展」を学ぶ(発がん病理)ことは、人生の意義 と目的の沈思へとも導くものと考える。ゆえに「発がん病理」は、「哲学」と深く関 連している。また「教育」にもつながる。専門分野の細分化は、「木を見て森を見ず 」という近視眼的な思考パターンに陥る心配がある。ゆえに俯瞰的な「発がん病理」 研究が「走るべき行程」と「見据える勇気」と世界の動向を見極めつつ歴史を通して 今を見ていく「視点」を持ち「真の独創性と国際性」の定義を明確にする努力をする ならば、「日本の土壌の上に立つ」、「世界への発信」が可能な「発がん病理」研究 が展開出来るものと考える。俯瞰的という言葉には多くの人は口では賛成するが、研 究費は取れない。細分化を推進する大きな流れは、我々を知識面での新しい開拓地へ と導くが、一方で「がんの理解」というものを、中途半端な状態におしとどめる危険 性もあることを理解する必要がある。

癌は開いた扇の様である

 小さく始まって着実に拡がって行く。「段階を越える原理」の解明が必要。 遺伝性癌でも「単因子病でありながら多因子病」の特徴を持つ。 本講演会ではヒト癌への" 懸け橋 "として遺伝性腎癌ラットを選び、「多段階発がん 」研究の実際を紹介して見たい。

 

 
 

 

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