平成12年健康指標プロジェクト講演会要旨 |
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第16回 (10月21日、14時〜17時、京大会館102)
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Eker (Tsc2 gene mutant)ラットを用いた腎癌発症の初期過程の解析
ー遺伝子型 (genotype)、表現型 (phenotype)、演出型 (dramatype)ー |
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樋野 興夫
(癌研、実験病理部、部長) |
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「歴史(時代認識)と方向性(リーダーシップ)」 (1)曲がり角を迎えている「発がん」研究の現状 (2)時代の証人として「発がん病理」の現代の使命 「発がん病理」研究の重要性と「社会貢献」 「発がん」は癌に関しての学問で「形態」、「起源」、「進展」などを追求する学問 分野である。癌研究者だけのものではなく、一般の人々のための学問でもある。我々 が、「発がん」をどのように考えるかはとても大切なことである。なぜなら、「発が ん」に対する概念が世界観、人生観、日常の決断や行動をも時には決定するからであ る。ある意味では癌の「起源」と「進展」を学ぶ(発がん病理)ことは、人生の意義 と目的の沈思へとも導くものと考える。ゆえに「発がん病理」は、「哲学」と深く関 連している。また「教育」にもつながる。専門分野の細分化は、「木を見て森を見ず 」という近視眼的な思考パターンに陥る心配がある。ゆえに俯瞰的な「発がん病理」 研究が「走るべき行程」と「見据える勇気」と世界の動向を見極めつつ歴史を通して 今を見ていく「視点」を持ち「真の独創性と国際性」の定義を明確にする努力をする ならば、「日本の土壌の上に立つ」、「世界への発信」が可能な「発がん病理」研究 が展開出来るものと考える。俯瞰的という言葉には多くの人は口では賛成するが、研 究費は取れない。細分化を推進する大きな流れは、我々を知識面での新しい開拓地へ と導くが、一方で「がんの理解」というものを、中途半端な状態におしとどめる危険 性もあることを理解する必要がある。 癌は開いた扇の様である 小さく始まって着実に拡がって行く。「段階を越える原理」の解明が必要。 遺伝性癌でも「単因子病でありながら多因子病」の特徴を持つ。 本講演会ではヒト癌への" 懸け橋 "として遺伝性腎癌ラットを選び、「多段階発がん 」研究の実際を紹介して見たい。
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