平成12年健康指標プロジェクト講演会要旨 |
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第15回 (9月16日、14時〜17時、京大会館102)
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生活習慣(食事、運動など)と免疫について
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久保 千春
(九州大学大学院医学研究院 心身医学) |
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食事、運動や睡眠などの基本的な生活習慣の乱れは、生体調節系に影響を及ぼし、生活習慣病をひきおこす。これらのことに関する動物モデルを用いた基礎研究を中心に述べる。 1.食事と免疫機能および病気の発症との関連 (NZB×NZW)F1, MRL/1pr,BXSBなどの自己免疫病発症マウスを用いて、栄養の量や質の差異が免疫機能、病気の進展や寿命に及ぼす影響について検討した。ヒトの全身性エリテマトーデスのモデルとして用いられる(NZB×NZW)F1マウスの場合、2ヶ月齢から食事成分にかかわらず総カロリー摂取量を自由摂取群の60%に減らすことによって外来抗原に対する通常の免疫機能は保持され、病気の進展は抑制されて、寿命は2倍に、さらに脂肪摂取量を制限することによって3倍に延長された。また、病気の発症直後の5ヶ月齢からカロリー制限した場合でも寿命は2倍に延長された。カロリー制限の効果は、これらの自己免疫発症マウスに共通の現象である。カロリー制限の効果については糖尿病発症マウス、高血圧発症ラット、肥満マウス等についてもみられている。 2.運動と免疫機能 急性の運動により免疫系が変化することは報告されている。例えば、急性の運動によって末梢血白血球数は増加する。ラットを用いて長期間の運動負荷を行った場合、IL-6やACTHのホルモンは増加した。また、免疫機能についてはリンパ球サブセットや機能に変化が見られた。IL-6の上昇については交感神経系が主に関与していることが示唆された。 3.睡眠と免疫機能 睡眠の乱れによって、免疫機能は低下する。ラットを用いて3日間のノンレム睡眠が遮断された場合、体重、脾、胸腺などの臓器の重量は減少し、一方、副腎は増加した。また、副腎皮質ホルモンやIL-6のサイトカインは断眠によって有意に増加した。免疫機能については、断眠によって脾細胞のTリンパ球マイトーゲンに対する反応性や、ナチュラルキラー活性は低下した。また、末梢血好中球貪食能は、断眠によって低下傾向が認められた。 このように、栄養、運動、睡眠等の生活習慣は、生体の防御能や病気の発症に影響を及ぼすことが、基礎的研究からも明らかになっている。生活習慣病の予防のために、これらのコントロールが重要である。
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