1999.12.17
 

 平成12年健康指標プロジェクト講演会要旨

第10回 (1月22日、14時〜17時、京都パークホテル)
クローン牛から学ぶもの
角田幸雄・加藤容子
(近畿大学 農学部)
 

 

 1952年にBriggs and Kingがヒョウガエルの胞胚の核を除核未受精卵へ核移植するとオタマジャクシへ発生することを報告して以来多くの研究が行われた結果、さまざまな発生ステージの胚細胞核やオタマジャクシの種々の体細胞核から正常な生殖能力を持つ個体が得られてきた。このことから、特殊な場合を除いて、発生・分化に伴って遺伝子は変化していないと考えられてきた。しかしながら一方で、成長したカエルの体細胞を核移植すると、オタマジャクシへは発生するが正常なカエルにはならないことも知られていた。

 哺乳類では、核の発生能力を追求する目的と同時に、有用家畜の育種・改良・増殖に応用するという観点から、核移植に関する研究が活発に行われてきた。その結果、胚盤胞期までの初期胚の核をあらかじめ活性化刺激を与えておいたMPF活性の低い除核未受精卵に核移植すると、ドナー核の細胞周期に影響されずに個体へ発生することが明らかになってきた。また、MPF活性の高い細胞質へ融合する場合は、ドナー核の細胞周期はG1期である必要性も明らかになった。1997年に成羊乳腺の培養細胞の細胞周期を血清飢餓培養によってG0期に同調させた後、未受精卵へ融合し、受胚雌へ移植することによって1頭の子羊が得られたとのブレイクスルーがあった。その後、マウス(1998年)とウシ(1998年)で成長した個体から採取した体細胞を核移植することによって産子が得られたことがあいついで報告されている。カエルでは不可能であったことが、哺乳類で証明されるに至った。この知見は、発生・分化機構や老化機構の解明、有用家畜の育種・改良・増殖や臓器移植用の組織作出に大きく寄与すると同時に、その応用にあたっては倫理的・社会的問題もはらんでいる。本日の講演会では、これまで行われてきたクローン動物作出研究をふりかえりながら、将来を展望してみたい。

 

 
 

 

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