1999.12.12
 

 平成12年健康指標プロジェクト講演会要旨

第10回 (1月22日、14時〜17時、京都パークホテル)
卵成熟の生物学
増井禎夫
(トロント大 ラムゼイライト動物学研)
 

 

 動物の体細胞の分裂能力は、癌細胞を例外とすれば、有限であって、寿命は、その能力に比例して、決められている。生殖細胞である卵や精子も、体内で成長するが、分裂を停止する。それらの一部は体外に放出されるが、そのままでは、やがて死ぬ運命にある。しかし、受精が、これらの細胞に分裂能力を回復し、受精された卵は、次の世代の生命を担う胚に発生する。卵成熟は、卵に、それが受精され、分裂能力をもつ機会を与えるのに必要な過程である。卵成熟によって、卵細胞質内に、細胞分裂促進因子(MPF)がつくられ、減数分裂が誘起され、染色体数が半減する。しかし、この減数分裂は、卵成熟後期において、出現する細胞分裂抑制因子(CSF)によって、中断される。精子の卵への貫入は、CSFを破壊し、受精卵は、MPF産生を再び繰り返し、その度毎に分裂するようになる。過去30年の研究は、この過程を明らかにしてきた。この講演では、これらの知見が、如何にして得られたかについて、順を追って解説したい。

 

 
 

 

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