第37回「いのちの科学」例会 (終了)
日 時:2011年5月21日(土)14:00〜
場 所:パストゥールビル5階 会議室((公財)体質研究会)
14:00〜15:00 委員会
15:00〜17過ぎ 話題提供話題提供者: 荒木 徹先生(京都大学名誉教授)
「地磁気の起源と変遷」要旨:地球は46億年前に出来たが、地磁気は30数億年前には存在したと言われている。地磁気が宇宙放射線
を遮ることにより、海洋中で誕生した生命体が陸上に進出できるようになった。
ある種の鉱物(磁鉄鉱)が互いに引力や斥力を示すことは、ギリシャ時代から知られていたが、やがて磁鉄鉱を細長く加工した磁針が南北方向を指すことが判り、方位磁石・羅針盤が実用化された。
コロンブスの航海日誌は、大西洋横断(1492年)中の羅針盤の方位変化を詳しく記している。ギルバート(エリザベス1世の侍医)は、各地の磁針の水平面からの傾き(伏角)のデータから、地球自身が一つの大きな磁石になっていると指摘した(1600年)。現在では、この磁石は、地球流体核(半径2900km以下)に流れる電流が作る電磁石であると判っている。帯磁した岩石は、キューリー点以上の高温で磁気を失う。逆に火山溶岩のような高温岩石が冷えると、その場の磁場方向に帯磁する。したがって、同時代に出来た岩石の帯磁の分布を調べると、その時代の地磁気の方向が判る。この古地磁気学と呼ばれる分野の研究から、地磁気の方向が、数万年―数十万年の間隔で何度も逆転していたことが明らかになった。また、1910年代に提案され、当時は荒唐無稽と笑われた大陸漂移が、実際に起こっていることが実証され、地震の機構を考える際に重要なプレートテクトニクスという新しい学問分野を生み出した。
電離層(地上100-500km)やその上の磁気圏に流れる電流も磁場を作り、これら外部起源場と内部起源場の和が地表で観測される地磁気になる。外部起源場は太陽活動と密接に関係して変動し、時には磁気嵐と呼ばれる激しい擾乱が生じる。この時には、オーロラ活動も活発になる。太陽は、可視光以外に、X線、紫外線、種々の波長の電波、高エネルギー荷電粒子、太陽風(主に陽子と電子)などを放出しており、地球の磁気圏・電離層に様々の現象を生じさせている。これらを調べるのは、太陽地球系物理学と呼ばれる分野で,電磁流体力学やプラズマ物理学が用いられる。太陽系の地球型惑星(水星、金星、地球、火星)の中では地球の磁場が最も強いが、外惑星(木星、土星、天王星、海王星)は、地球より遥かに強い磁場を持っている。これは、惑星磁場の起源に関して比較惑星学の興味深いテーマである。
1995年以降、太陽系外の恒星にも惑星が発見され始め、その数は、既に400を超えている。比較惑星学は、我々の太陽系を超えて宇宙へ広がろうとしている。
バクテリアには地磁気の方向に移動するものがあり,ウミガメや渡り鳥は地磁気で方位を定めると言われている。
「環境と健康」24巻4号に掲載予定
出席:鳥塚、清水、栗原、今西、中井、山岸、内海
客員:伊東、小西、村田、佐野、高島