ハイパーサーミアの原理については、培養細胞や実験腫瘍を用いた多くの研究があり、それから次のように言える。
(1) 悪性腫瘍は正常組織に比して温熱感受性が高い。
一般に腫瘍内は正常組織に比べてpHが低く、低pH下の細胞は温熱感受性が高いことが認めあられている。なお最近癌細胞そのものが正常細胞より温熱感受性であるとい
うデータが出つつある。
(2) 悪性腫瘍は加温時に温度上昇が得られやすい。
正常組織では加温に対して血流が増加し、それが冷却に働いてなかなか温度が上昇しにくいが、腫瘍では加温に対して血流はほとんど増加しないか時には逆に低下し、したがって血流による冷却効果がないので温度が容易に上昇する。
(3) 温熱は放射線の効果を増強する。
その効果は温熱と放射線を同時に適用した場 合に最も著しいが、前後に数時間までずれておある程度の効果は期待できる。なお、 直接的な効果増強のほかに放射線は毛細血管周辺の酸素分圧の高い部分に有効である
が、血管から遠い低酸素部分では効果が低下する。これに対しハイパーサーミアでは 血管から遠いところほど温度が上昇しやすく温熱の効果が上がり、両者が互いに補うという効果も考えられる。また細胞周期の上では放射線抵抗性のDNA合成期(S期)が、
逆に温熱高感受性で両者を併用する細胞周期の影響がほとんどなくなるということも ある。
(4) 温熱はいろいろの制癌剤の効果を増強する。
現在までのところすべての制癌剤 について調べられているわけではないが、効果の認められているものに日常よく使わ れている CDDP,
MMC, Bleomysin Adriamycin, 5-FU ACNU, BCNO, Cyclophosphamide, Melphalan,
Thio-TEPA などがある。
(5) 一度加温すると熱耐性を生じ、温熱感受性が著しく低下するので、次の加温 はそれの消失する3日後が望ましく、したがって従来は週2回の加温が行われたが、
最近は週1回が普通になっている。
(6) 原理として特別の副作用はない。
43℃までの温熱は正常組織にとっては生理的 範囲にあり問題はない。ただ加温技術によっては時に部分的な異常高温を生じることがあり、それが火傷や脂肪組織の硬血をまねいたりする。しかしほとんどのものが一過性である。
以上をまとめると 42−43℃の加温さえうまくいけば癌特異的な理想的治療法と言える。
お問い合わせ先: thermot@taishitsu.or.jp
|