改訂版 まえがき

菅原 努

 私は3年前にこのホームページでハイパーサーミアの解説を始め、沢山の質問に答えてきました。残念ながらお医者さんからのものはほんの2、3で、殆どが患者さんかその家族からのものでした。その一方で、このメイルを通じて紹介した患者さんの切なる願いをきいて積極的にハイパーサーミアを活用していただいたお蔭で、その適応がどんどん広がり、それとともにそれを裏付ける新しい研究も発展してきました。そこで歴史的なことは今までのもの(旧版)にまかせ、新しく私が現状をふまえ重要と思う点にしぼって解説することにしました。

 ハイパーサーミアというのは物理的方法の医学への応用の一つですから、その開発は当然科学的にすすめられてきましたが、それを何処まで物理的に割りきるかが問題の分れ目だと言うのが、私が25年余にわたる国際的な開発競争を体験しての印象です。折角健康保険でも認められているにもかかわらず我が国でこの治療法が十分に伸びない一番の原因は、研究の第一線にいる人たちがこの競争の意味を正しく理解せず、アメリカで成功するまでは、本物ではないと思い込んでいるところに一番の原因がある、と思います。勿論保険の点数が適正かどうかという問題もありますが。殆どのがん治療についての一般向け解説書でも、ハイパーサーミアは無視されるか、仕方がないときの民間療法の一つくらいにしか書かれていません。でも一部でハイパーサーミアを活用してがん治療によい成績をあげておられる病院があるのです。これでは患者さんは困るのではありませんか。がん治療に当たられる医師の方には、是非ハイパーサーミアについての正しい知識を身に付けて欲しいものです。

 このような現状をふまえて、どうすれば本当に患者さんの役に立つハイパーサーミアの活用が行われるようになるだろうか、ということを念頭に私として精一杯の気持をこめて以下の解説を書きました。

 

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