I 公益事業 |
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1.調査研究事業 |
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(1 |
) 高自然放射線地域住民の疫学調査研究 |
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放射線のリスク評価については、従来、原爆被爆者の健康調査結果がその基礎にされていたが、原爆被爆は一回の急性照射であることから、日常で問題になる低線量長期被ばくのリスクについては、放射線に日常的に、常時、暴露されている人々に関する疫学調査結果が重視されるようになって来た。
(公財)体質研究会は、中国広東省に存在する高自然放射線地域に注目し、1992年以来、中国の研究者との共同研究により地域住民の健康におよぼす低線量放射線の影響調査(疫学調査、線量調査および染色体異常調査)を実施してきた。その結果、高自然放射線地域でのがん死亡率、有病率と対照地域のそれとの間には有意な差はなく、高自然放射線地域でのがん死亡と対照地域のそれらとの比較値(相対リスク)は1に近いという結果を得た。
このような知見は、対象人員数が多く、調査期間が長いほど、その正確さが増すことになる。そこで、(公財)体質研究会は中国とは生活様式、生活習慣が異なり、中国より高い自然放射線量を示すインド・カルナガパリ地区においても同様な調査を開始した。
本研究は、これら中国、インドでの調査をさらに継続し、これまでの結果を確認し、その信頼性を増すことを目的とするものである。
本年度、中国においては、引き続き、がん罹患、死亡率、移動についてのデータの収集・蓄積を行う。また、がん・非がん死亡リスクの解析、交絡因子調査を行う共にコホート内の小集団について症例・対照研究を実施する。
また、インドにおいては38万人に拡大した調査対象者について、引き続き、中国と同様、がん罹患、非がん死亡データなどの収集を行うと共に、生活習慣、喫煙を中心とした交絡因子の解析を実施する。
また、新たな調査項目として、中国およびインドの調査地域において甲状腺および白内障調査などの健康調査を実施する。
さらに、観察結果の信頼度をより強固なものにするため、中国およびインドで得られた結果を、あわせて、解析できるよう検討する。
一方、本研究により得られた成果は一部の研究者には注目されているものの、いまだ、国際的な影響力を発揮するには至っていない。そこで、今年度は、論文にまとめるために必要なデータを得ることに留意し、これまでに収集したデータの解析を進めると共に、その成果を国際機関に伝え、働きかけるための行動を展開する。
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(2 |
) 放射線リスク評価に関する調査 |
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当研究会は1984年に「放射線リスク検討会」を組織して以来、放射線のリスクに関心を持つ専門研究者を集め、主として放射線リスクについての人々の理解を得る方策につき、毎年調査・研究を進め、その結果について報告を行ってきた。
本事業年度も引き続き、放射線のリスク評価に関する国内外における最近の情報を収集・検討すると共に、放射線生物学の成果にもとづく放射線発がんのリスク評価についての調査・研究を行う。さらに、原子力利用の社会的受容の問題と関連して、日本における原子力の社会認識の現状と問題点や放射線に関連した原子力施設の立地をめぐる合意形成などについても調査検討する。また、リスクコミュニケーションの論理と技術についても取り上げる。最後に、25年間にわたる活動をもとに、本検討会で得た調査結果や成果を、出版物として公表するための形式や方法についても検討する。
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2.アイバンクの運営 |
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京都大学医学部附属病院眼科と連携して角膜移植に協力するため、引き続き本事業年度も次の事業を行う。 |
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1) |
眼球提供者の登録業務、献眼の受付業務を行う。 |
2) |
登録者を少しでも増やすため次の啓蒙・啓発活動を行う。
イ.京都・滋賀・奈良地区アイバンク関係機関誌の登録者等への発送
ロ.医療機関等へのポスター・パンフレットの設置・補充
ハ.「手づくり市」等での啓蒙活動を4回行う。 |
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3.「いのちの科学」の研究・普及 |
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従来の医学における治療や予防の研究は、要素還元主義に基づく分析と多数の測定結果によって評価されてきた。しかし、それだけでは解決できない現象が治療や予防の上で見られている。
そこで、要素還元主義を離れ総合的な立場で、しかも科学的に医療や予防の効果を評価する指標の研究開発を平成10年度から行ってきた。しかしこの立場からでは「いのち」を理解することは困難であるとの反省から、平成17年度から委員を交替し、文系の委員も参加して新たに「文理融合」をテーマにした多面的な「いのち」の科学の研究を行ってきた。しかし、文理の壁は厚く、もう少し思考方法を変え委員も交替し、宗教の専門家(仏教とキリスト教)も交えて、より幅広い「共に生きる」を柱とした「いのち」の科学の研究を21年度から始めており、今年度もこれを継続する。
1) |
市民公開講座「いのちの科学フォーラム」を4回程度開催する。 |
2) |
委員を中心とした例会を5〜6回開催する。 |
3) |
季刊誌「環境と健康」の刊行 |
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「環境と健康」を を4回(秋号・冬号・春号・部数1,100部、各巻120〜160頁)発行する。内1,000部は、会員及び関係者に配布する。又100部については、(有)共和書院を発売所として全国の主な医学系書店で市販する。定価一冊800円(税込み)
Vol.24 |
No.2 |
を平成23年 6月1日に、 |
〃 |
No.3 |
を平成23年 9月1日に、 |
〃 |
No.4 |
を平成23年 12月1日に、 |
Vol.25. |
No.1 |
を平成24年 3月1日に刊行する。 |
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4) |
昨年度具体化するに至らなかった、シリーズ「いのちの科学―共に生きる」全5巻の企画と第1巻の発行 |
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4.放射線照射利用の促進 |
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放射線照射技術は工業、医療、農業など多くの分野で使用されているが、その利用の実態は一般には、全くといっていいほど知られていない。
(公財)体質研究会は「原子力利用についての理解をいっそう深め、放射線に関する認識を高めることが大切である」という立場から、一般公衆の放射線に関する認識を高め、また、放射線の利用についての理解をいっそう深めること、さらに、放射線のさらなる利用の促進とその範囲の拡大を図ることにより国民生活の利便向上に資することを目的に活動を展開している。
これらの目的を達成するため、今年度も引き続き、以下の事業を実施する。
1) |
講演会・見学会の開催:放射線照射利用技術に関する最新情報、特徴ある分野の情報を提供すると共に、一般公衆の放射線照射に関する理解を得ることを目的に、放射線照射に関する知識普及と理解に役立つ情報提供を目指した講演会や見学会を実施する。 |
2) |
JAPIニューズレターの発行:ニューズレターを年6回発行し(A4版、12ページ以上)、放射線および放射線照射の理解に役立つ情報を提供する。また、放射線照射に関る幅広い記事を掲載するなど、記事内容の充実を図ると共に、“みんなでつくる機関誌”の立場で、広く原稿を募集する。 |
3) |
ホームページの充実:放射線の基礎知識をはじめ放射線照射利用の理解に役立つ情報を提供する。また、JAPIニューズレターを掲載する。 |
4) |
他組織との交流:放射線照射利用に関係する団体、学会、業界などとの交流を深め、連携し、広く情報の収集と活動の広がりを図る。また、講演会、見学会など、他機関との共同開催も検討する。 |
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5.その他 |
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調査研究等活動の成果を積極的に社会に還元・発信するために、本事業年度も引き続き次の事業を行う。
1) |
ホームページ http://www.taishitsu.or.jp の維持管理 |
2) |
癌の温熱療法の普及啓発
ホームページ上に設けている「ハイパーサーミア(癌の温熱療法)」の維持管理を図り、患者からの相談メールに対応し、温熱療法実施医療機関への紹介等を行う。 |
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II 収益事業等 |
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Tの公益事業の実施に伴い、附随的に行う収益事業等として次の事業を行う。 |
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1.ナリネ菌製剤等健康食品の発売 |
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(株)ナウカコーポレーションが総販売代理店として市販を行っている、健康食品「ボンナリネ」・「ボンピュアー」・「ビュークレール」・「プレビアスV1」について、当財団を販売者として名称使用することの許諾を継続する。
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2.研究助成並びに奨励事業 |
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本財団の事業目的に適合する研究・調査等を行っている学会や、協会、研究機関等及び個人に対する助成を行う。
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V 創立70周年記念行事 |
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本財団は昭和16年11月18日に設立登記され、本年で70周年を迎える。これを記念して式典及び記念講演会を平成23年11月20日(日)京都大学芝蘭会館稲盛ホールにおいて開催する。 |
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