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 平成22年度 事業計画書

 

(公益財団法人としての最初の事業年度分)
(平成22年9月1日から平成23年3月31日)

  I  公益事業

   

 1.調査研究事業

   
(1 ) 高自然放射線地域住民の疫学調査研究
   
 

 (公財)体質研究会は、中国広東省に存在する高自然放射線地域(HBRA)に注目し、1992年以来、中国の研究者との共同研究により、がん死亡率、有病率の比較、がん死亡とがん発症に影響を与える交絡因子など、地域住民の健康におよぼす自然放射線の健康影響調査を実施してきた。さらに、中国とは生活様式、生活習慣が異なり、中国より高い自然放射線線量を示すインド・ケララのカルナガパリ地区についても、中国HBRAと同様な調査を行っている。

 本事業年度では、前事業年度に引き続き、がんおよび非がんなどのデータの蓄積を図ると共にまとめ成果の発表、国際誌への論文投稿を進める。
 このうち、中国では、a)がん罹患、b)死亡率、c)移動 についての追跡期間の延長とデータベースの作成および、d)がん・非がん死亡リスクの解析、交絡因子調査を行う。また、健康調査研究として甲状腺調査・白内障調査などの調査・研究を実施する。
 また、インドにおいては38万人に拡大した調査対象者について、がん罹患、非がん死亡データの収集を行う。同時に、生活習慣、喫煙を中心とした交絡因子の解析を実施する。さらに、観察結果の信頼度をより強固なものにするため、中国およびインドで得られた結果を、あわせて、解析できるよう検討する。また、新たな調査項目として、甲状腺あるいは白内障などの健康調査を実施する。
 さらに、今年11月に予定されている第7回高自然放射線およびラドン地域に関する国際会議(7thHLNRRA)では、開催に参加・協力すると共に、インド調査地域においてHBRA研究に関するワークショップを企画開催し、本研究の重要性を世界へアピールすることを目指す。
 染色体関連調査研究では、前事業年度に引き続き、高自然放射線地域と対照地域の女性住民より採取した標本について染色体異常調査を行う。
 線量研究については、中国においてはボクセルモデルを使った臓器線量の推定を行う。また、インドにおいては、先の津波により状況の変化が生じている海岸を中心に環境放射線量の再調査を検討する。また、甲状腺調査、染色体調査の対象者については個人線量測定を実施する。
 その他、1)研究成果検討会・研究会開催、2)第7回高自然放射線およびラドン地域に関する国際会議への協力・参加、3)インドでの国際会議に合わせた国際ワークショップの開催(2010.Nov.20-21)を予定している。

 

(2 ) 放射線リスク評価に関する調査
   
 

 当研究会では1984年以来、放射線リスク検討会を組織し、主として放射線のリスクに関心を持つ専門の研究者を集め、放射線リスクについての人々の理解を得る方策につき、毎年調査・研究を進め報告を行ってきた

 本事業年度は、前事業年度の計画に基づき放射線のリスク評価に関する国内外における最近の情報を収集・検討すると共に、最近の低線量放射線の健康影響調査結果をまとめ、日本における放射線関連の教育の現状と問題点を検討する。さらに、原子力利用の社会的受容の問題と関連して、放射線に関連した原子力施設の立地をめぐる合意形成等についても調査検討する。また、最近話題になっている新世代型の原子力発電の展望と安全性の問題にも着目する。最後に、25年間にわたる活動をもとに本検討会で得た調査結果や成果をどのようにまとめて活用するのか、公表するための形式や方法についても検討する。

 

2.アイバンクの運営

   
 

 京都大学医学部附属病院眼科と連携して角膜移植に協力するため、引き続き本事業年度も次の事業を行う。

 

  1)眼球提供者の登録業務、献眼の受付業務を行う。
  2)登録者を少しでも増やすため次の啓蒙・啓発活動を行う。
   イ.京都・滋賀・奈良地区アイバンク関係機関誌の登録者等への発送
   ロ.医療機関等へのポスター・パンフレットの設置・補充
   ハ.「手づくり市」等での啓蒙活動を2回行う。

 

3.「いのちの科学」の研究・普及

   
 

 従来の医学における治療や予防の研究は、要素還元主義に基づく分析と多数の測定結果によって評価されてきた。しかし、それだけでは解決できない現象が治療や予防の上で見られている。
 そこで、要素還元主義を離れ総合的な立場で、しかも科学的に医療や予防の効果を評価する指標の研究開発を平成10年度から行ってきた。しかしこの立場からでは「いのち」を理解することは困難であるとの反省から、平成17年度から委員を交替し、文系の委員も参加して新たに「文理融合」をテーマにした多面的な「いのち」の科学の研究を行ってきた。しかし、文理の壁は厚く、もう少し思考方法を変え委員も交替し、宗教の専門家(仏教とキリスト教)も交えて、より幅広い「共に生きる」を柱とした「いのち」の科学の研究を昨年度から始めており、今事業年度もこれを継続する。

1) 市民公開講座「いのちの科学フォーラム」を2回程度開催する。
2) 委員を中心とした例会を3回開催する。
3) 季刊誌「環境と健康」の刊行
    環境と健康」を3回[秋号・冬号・春号・部数1,100部、各巻120〜160頁]発行する。内1,000部は、会員及び関係者に配布する。又100部については、(有)共和書院を発売所として全国の主な医学系書店で市販する。定価一冊800円(税込み)
Vol23 .No3 を 平成22年9月1日に、
 〃 No4 を 平成22年12月1日に、
Vol24 .No1 を 平成23年3月1日に刊行する。
4) シリーズ「いのちの科学―共の生きる」全5巻の企画と第1巻の発行

 

 

4.放射線照射利用の促進

   
 

 放射線照射技術は工業、医療、農業など多くの分野で使用されているが、その利用の実態は一般には、全くといっていいほど知られていない。
 本財団では「原子力利用についての理解をいっそう深め、特に放射線に関する認識を高めることが大切である」という立場から、放射線の利用についての理解をいっそう深めること、さらに、放射線のさらなる利用の促進とその範囲の拡大を図ることにより国民生活の利便向上に資することを目的に活動を展開している。

 これらの目的を達成するため、今事業年度も引き続き、1)ニューズレターの発行、2)講演会・見学会の開催、3)ホームページの充実、4)類似他組織との連携・交流の強化を推進する。
 そのため、前事業年度に引き続き、JAPIニュースレターを発行し、放射線の基礎知識をはじめ放射線照射利用の理解に役立つ情報を提供する。また、平成22年10月1日には美浜原発PR館、関西電子ビーム新照射施設(福井県美浜町)の見学会を実施する。さらに、平成23年1月28日(金)には「獣医学分野における放射線利用」「食品照射に関する話題」、「医療における放射線の利用」などをテーマに講演会を開催する。また、ONSA(大阪ニュークリアサイエンス協会)、量子放射線利用協議会など、放射線照射利用に関係する団体、学会および業界などと交流を深め、連携し、広く情報の収集と活動の広がりを図る。

 

5.その他

   
 

 調査研究等活動の成果を積極的に社会に還元・発信するために、本事業年度も引き続き次の事業を行う。
  1)ホームページhttp://www.taishitsu.or.jpの維持管理
  2)癌の温熱療法の普及啓発
 ホームページ上に設けている「ハイパーサーミア(癌の温熱療法)」の維持管理を図り、患者からの相談メールに対応し、温熱療法実施医療機関への紹介等を行う。

 

 II  収益事業等

   
 

 Tの公益事業の実施に伴い、附随的に行う収益事業等として次の事業を行う。

   

1.ナリネ菌製剤等健康食品の発売 

   
 

 (株)ナウカコーポレーションが総販売代理店として市販を行っている、健康食品「ボンナリネ」・「ボンピュアー」・「ビュークレール」・「プレビアスV1」について、当財団を販売者として名称使用することの許諾を継続する。

 

2.研究助成並びに奨励事業 

   
 

 大学、本財団の研究事業に適合する学会や、協会、研究機関及び個人に対する助成を行う。