同じ放射線に対して、ある時には人々はそれを受け入れ、ある時には拒否するということがしばしば見られる。不安を解消して安心を得るための対応には、対象のもつリスク認知を十分に理解することが重要であり、リスク認知がどのようなもので、どのような要因によって安心に向かうかを明らかにしておくことが不可欠である。しかし、情報を受容する側のリスク認知に関する価値判断はどのような要因によって規定されているかについては、未だ明らかにされていない。
本研究では、価値観の異なるいくつかのグループについて、我々が蓄積している低線量放射線の健康影響に関するデータを示し、それに対する反応により、リスクはどういう要因で規定されるか、安全と安心におけるリスクとその認知の位置づけなどを調べる。特に、情報を伝え、世論のリーダーにもなり得るいわゆる専門家およびジャーナリストは、データをどう解釈し、リスクをどのように理解しているかについて、放射線という言葉をキーワードとしてリスクという言葉の使われ方を中心に検討し、正しいリスクを伝えるための問題点の解明を目指す。