2007.7.1

 
 
科学の前線散策
 
 
7. 炭酸ガスだけでないもう一つのリサイクルの必要な物

菅 原  努


 

 

 皆さんは、白金は極めて貴重なものと思っているでしょう。それが自動車の排気ガスの分解用の触媒として極めて重要で、実際に使われその一部が排気ガスと一緒に地面に撒き散らされているのです。道路清掃機の集めたごみの中からそれを回収できなかと考えている科学者がいることを紹介するところからこの物語は始まります。

 地球温暖化がいよいよ本物だとして、人の活動で作り出すCO2について関心が集まっています。しかし、もっと緊急に対策を立てるべき物があるのに人々は忘れていないか、と問いかけている人がいるのです。それが「地球の監査報告書」という話を New Scientist という雑誌に書いている David Cohen です。その物とは地球上の存在に限度があり、その限界の迫りつつある金属類です。例えば、地球温暖化対策としてクリーンエネルギーの太陽光発電が注目されていますが、それにはインヂュウムとガリウムとが必要です。実際の使用量は 1%以下でしょうが、これは極めて微量しか存在せず、今のままで使えばインヂュウムは 5 年も持つだろうかと心配しています。はじめに心配した白金の方は今のままで使えば 360 年もつと計算しています。でも撒き散らしているのはもったいないですね。

 携帯電話も有害金属を含んでいて、そのまま排気すると公害になる可能性がありますが、その中の微量金属を回収する方法を考えないと間もなく携帯電話そのものが作れなくなるのではないでしょうか。例えばタンタラムという微量元素が必要で、今のままで使うと 20 年で半分になってしまうと計算しています。

 一番よく使われている鉄もビルや自動車など、発展途上国にまで広がっていくと、何時まで持つか心配で、出来るだけ代わりの物で置き換えることを考えなければならないでしょう。現に鉄や銅も値上がりして,盗難が絶えないと新聞などで報じられています。これも資源が底をつきかかっている印かもしれません。