昔から白アリは木造住宅の大敵です。しかし、これをうまく使うことで、材木を直接バイオエネルギーに変換することが考えられます。私も子供時にファーブルの昆虫記を読んで、白アリをうまく使って材木を直接消化出来たらすごいなあ、と思ったことがありました。白アリの腸は直接木材を消化するのではなく、腸中に棲む細菌が材木を糖分に変えていることが分かっていたのですが、その本体はよく分かりませんでした。その理由はこれらの細菌は宿主からとりだすとすぐに死んでしまうからです。
パサデナにあるカリフォルニア工科大学の Jared Leadbetter らは、これに挑戦したのです。彼らはコスタリカ産の白アリの腸内細菌の遺伝子解析を行い、約 1,000 の関連する遺伝子を見つけました。そして材木の成分はセルローズ、リグニン、キシレンですが、これらのどれか一つでも分解するのに少なくとも一ダース位の酵素が必要なことが分かりました。彼らは、これから材木を分解してバイオ燃料をつくる基礎にしようと考えているようです。廃材がどんどんバイオ燃料に変えられたらすごいな、と思います。
この論文は昨年 11 月の Nature に発表されたのですが、MIT(マサチュセッツ工科大学)の技術レビュー誌は早速これを紹介していますが、これに対する批判的な意見も紹介しています。その 2、3 を紹介します。
これらの細菌は材木の特別の成分を消化しているだけで、これで簡単にエタノールが得られるとは思えない。
南米の白アリを使うことは生態系に問題を与える。自分の住んでいるところで探すべきである。白アリのほかにも材木を消化する生物がいることにももっと注意するべきである。
あまりいいアイデイアではない。そんなことをしなくても、材木は炭化すればよいではないか。等々
これは思ったほど名案ではないのでしょうか。私にはやはり昔ファーブルの昆虫記を読んだときの、驚きと期待が忘れられないのですが。
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