これは科学というよりは科学者の問題でしかもアメリカのように国の大きいところの話です。しかし、日本でも国際会議参加などを考えれば全く問題なしとは言えません。毎年 12 月に米国地球物理学協会(AGU)の総会がサンフランシスコで開催されます。2002 年には 9,500 名の参加者がその参加のために往復で平均 7,971km を飛びました。この全飛行で放出されたCO2の総量は 11,000 メートルトンになり、これはホンダ・シヴィック 2,250 台が一年走る量に相当します。こうなると学会では如何にしてCO2 排泄を減らすかを論じながら、そのために実際には反対にCO2 を沢山排出しているということにならないでしょうか。最近ではいろんな分野で国際交流も増え国際会議も盛んに行われ、増えることはあっても減ることはありません。またこれがよいビジネスにもなって、益々増える傾向にあります。
最近幾つかの学会がこの問題を取り上げるようになってきました。米国生態学会(ESA)では環境影響を減らすための努力を始めました。プログラム冊子を薄くし、大豆由来のインキを使い、広告は電子媒体によるなどです。またホテルにもシーツなどの交換を減らすよう指導しました。主催者に言わせるとささやかなものですが。
初めに述べたAGU では最近までこのことを問題にしていませんでしたが、今度の総会から、幾つかのセッションはWebで見られるようにするほか、会場のシャトルバスの運転手にはアイドリング・ストップをするように指示しているそうです。
また自然保存生物学などでは、95%の参加者が航空機を利用しているので、普段の生活でCO2排泄を減らす努力をするように提案し、学会参加費の徴収のときにそのために$20 までの寄付を集めるなど、試みています。そんなことなら会議などは全部メールか、テレビ会議にしたらよいのではないかという意見もあるでしょう。しかし、実際にはGorden 会議にように、互いに知り合い、自由に意見を交換することこそ学会の意義だという考えも強く、これは実現が難しいようです。
以上はアメリカの科学雑誌Science の 10 月 5 日号にあった記事ですが、そこには科学者への旅行の心がけとして次の 8 項目が述べられています。残念ながら我が国の学会では未だこんな話は聞きません。
- やめられる学会への参加は取り止めること。
- 止めれない時には、飛行距離が出来るだけ短くなるように組み合わせを考えること。
- あまりに飛行距離の長いところでの会議は避けること。
- 近くの会議には車か列車を利用すること。
- 会議場に近いホテルをとること。
- 会議の主催者のそこでのホテルのシーツやタオルの交換を減らすように要請すること。
- 使い捨ての皿やコップを使わないこと。
- どうせ帰ったら捨てるようなパンフレットなどをあつめないこと。
でもどうもこれぐらいではあまり立派な対策とはいえないように思いますが。でも何もしないよりは。
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